CRERIT VTE cancer:医師主導前向き介入研究
研究概要
目的・対象・方法
急性VTE*1を発症した活動性悪性腫瘍患者40例について、イグザレルトの血栓退縮効果を検討した。イグザレルトは15mgを1日2回3週間投与した後、15mgを1日1回投与した。
主要評価項目
イグザレルト投与開始から3週間及び3ヵ月時点の造影CTを用いて評価した血栓退縮率(血栓完全消失率の評価も行う)
副次評価項目
症候性VTEの再発、出血性合併症[重大な出血(ISTH基準)、重大ではない出血]
解析計画
探索的解析とし症例数は実現可能性をもとに設計された。主要評価項目は最大の解析対象集団*2、有効性及び安全性イベント、有害事象は安全性解析対象集団*3で評価した。主要評価項目である血栓退縮率は、イグザレルト投与開始3週間及び3ヵ月の時点で退縮した血栓体積の比率とし、対応のあるt検定を用いてベースラインの血栓体積と比較した。すべての検定結果はp<0.05の場合、統計的に有意とした。
判定基準
PEの再発は、肺血管造影、CT、肺血流シンチグラフィーあるいは、剖検による新たなPE所見と定義した。DVTの再発は、新たな血栓、エコー検査による直径4mm以上の血栓の増大、造影CTによって同定された新たな血栓とした。
重大な出血(ISTH基準)は、2g/dL以上のヘモグロビン量の低下を伴う出血、2単位以上の輸血(濃厚赤血球又は全血)が必要な出血、重要な臓器における出血、死因となった出血とした。 重大ではない出血は、重大な出血の基準を満たさない出血とした。
COI
本研究はバイエルの支援により行われた。
- *1:症候性または無症候性PE、下肢または上肢の近位DVT、上大静脈または下大静脈の血栓
- *2:登録後に不適格と判断された患者や登録後に治療開始などの情報が得られない患者を除くプロトコルで定められた治療を受けた全患者
- *3:試験薬を少なくとも1回以上投与された患者
Takai S et al, Sci Rep 2022 12:21569
患者背景
*:平均値±標準偏差
数値は n(%)
安全性解析対象集団
Takai S et al, Sci Rep 2022 12:21569(クリエイティブ・コモンズ・ライセンス表示4.0 国際 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/)より改変
COI:本研究はバイエルの支援により行われた
主要評価項目
-
血栓退縮率(平均値)
血栓完全消失率
主要評価項目: イグザレルト投与開始から3週間後及び3ヵ月後の血栓退縮率(血栓完全消失率の評価を含む)
血栓退縮率は、造影CT画像を用いてベースライン時の血栓体積と比較した。
プロトコル適合集団/解析方法:対応のあるt検定
- 9.特定の背景を有する患者に関する注意(抜粋)
・出血リスクが高い患者
以下のような患者では、出血の危険性が増大する。
止血障害のある患者/凝固障害のある患者/先天性又は後天性の出血性疾患のある患者/コントロールできない重症の高血圧症の患者/血管性網膜症の患者/活動性悪性腫瘍の患者 等
安全性に関する情報は「安全性イベントの発現状況」を参照
Takai S et al, Sci Rep 2022 12:21569(クリエイティブ・コモンズ・ライセンス表示4.0 国際 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/)より改変、作図
COI:本研究はバイエルの支援により行われた
副次評価項目
VTEの再発及び出血性合併症
数値は n(%)、安全性解析対象集団
- 9.特定の背景を有する患者に関する注意(抜粋)
・出血リスクが高い患者
以下のような患者では、出血の危険性が増大する。
止血障害のある患者/凝固障害のある患者/先天性又は後天性の出血性疾患のある患者/コントロールできない重症の高血圧症の患者/血管性網膜症の患者/活動性悪性腫瘍の患者 等
安全性に関する情報は「安全性イベントの発現状況」を参照
Takai S et al, Sci Rep 2022 12:21569(クリエイティブ・コモンズ・ライセンス表示4.0 国際 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/)より改変、作図
COI:本研究はバイエルの支援により行われた
安全性イベントの発現状況
出血性合併症
数値は n(%)、安全性解析対象集団
有害事象
40例中14例(35.0%)に有害事象が発現した。重大な有害事象は7例に発現し、肝機能障害2例、消化管出血、重篤な貧血、イレウス、造影剤アレルギー、仮性動脈瘤がそれぞれ1例であった。15例が投与中止となり、その理由は有害事象10例、overdose1例、がんによる死亡2例、その他2例であった。
- 9.特定の背景を有する患者に関する注意(抜粋)
・出血リスクが高い患者
以下のような患者では、出血の危険性が増大する。
止血障害のある患者/凝固障害のある患者/先天性又は後天性の出血性疾患のある患者/コントロールできない重症の高血圧症の患者/血管性網膜症の患者/活動性悪性腫瘍の患者 等
Takai S et al, Sci Rep 2022 12:21569(クリエイティブ・コモンズ・ライセンス表示4.0 国際 https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/)より改変
COI:本研究はバイエルの支援により行われた
まとめ
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主要評価項目であるイグザレルト投与後の血栓退縮率(平均値)は、3週間後で83.1%、3ヵ月後で98.7%であった。
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ベースラインと比較して、3週間後及び3ヵ月後のいずれも有意に血栓が退縮した(p<0.05、対応のあるt検定)。
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出血性合併症は、急性期で5例(12.5%)、維持期で5例(15.2%)に発現した。そのうち、重大な出血は、急性期に4例、維持期に3例報告され、全例が非致死的な出血であった。
Limitation
- 単群かつ、症例数が少ない非盲検の介入研究である。
- 他の抗凝固薬との比較検討をしていない。
- イグザレルトによる血栓退縮効果をがん種別に検討できていない。
- 9.特定の背景を有する患者に関する注意(抜粋)
・出血リスクが高い患者
以下のような患者では、出血の危険性が増大する。
止血障害のある患者/凝固障害のある患者/先天性又は後天性の出血性疾患のある患者/コントロールできない重症の高血圧症の患者/血管性網膜症の患者/活動性悪性腫瘍の患者 等
安全性に関する情報は「安全性イベントの発現状況」を参照
Takai S et al, Sci Rep 2022 12:21569 COI:バイエルの支援により行われた