臨床試験:肺血栓塞栓症及び深部静脈血栓症
J-EINSTEIN PE/DVT:国内第III相試験
試験概要
J-EINSTEIN PE/DVT:国内第III相試験
目的
日本人の急性症候性PE及びDVT患者におけるイグザレルトの安全性と有効性を標準治療(未分画ヘパリン/ワルファリン)と比較検討すること。
対象
J-EINSTEIN PE:急性症候性PE患者(症候性DVTの有無を問わない)40例
J-EINSTEIN DVT:急性症候性DVT患者(症候性PEを伴わない)60例
方法
・イグザレルト群は、初期3週間はイグザレルト15mgを1日2回*、その後は15mgを1日1回食後経口投与とした。
・標準治療群は、少なくとも初期5日間は未分画ヘパリン[活性化トロンボプラスチン時間(aPTT)が正常対象の1.5-2.5倍で用量調節]を1日静脈内投与し、ワルファリンカリウム経口投与との併用下でプロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)が2回連続で1.5以上となった後、ワルファリンカリウム単独投与(目標PT-INR:1.5-2.5)とした。
・確定診断を待たずに治療開始が推奨されているVTEの疾患特性から、無作為割付前48時間以内の非経口抗凝固薬による治療は可能とした。
*:J-EINSTEIN DVTでは10mg1日2回群あり
評価項目
有効性主要評価項目:症候性VTEの再発
安全性主要評価項目:重大な出血又は重大ではないが臨床的に問題となる出血
副次評価項目:治験薬投与開始21日後の「血栓退縮効果」、治験薬予定投与終了後の「無症候性の血栓像の悪化」、及び治験薬予定投与期間中の「症候性VTE」又は「無症候性の血栓像の悪化」の複合エンドポイント
判定基準
有効性および安全性主要評価項目の判定については、EINSTEIN PE/DVTと同様とした。
解析計画
有効性および安全性主要評価項目に対して、イベント発現率の点推定値と95%信頼区間を投与群ごとに算出した。また両群間の発現頻度の差についても点推定値及び95%信頼区間を算出した。
承認時評価資料、Yamada N et al. Thromb J 2015; 13: 2-8
COI:本研究はバイエルの資金により行われた。また、著者にバイエルより講演料、コンサルタント料等を受領している者が含まれる。
日本人PE/DVT患者におけるイグザレルトの有効性・安全性
[有効性主要評価項目]
- 症候性VTEの再発
ITT解析対象集団/予定投与期間(3、6又は12ヵ月)
[安全性評価項目]
- 重大な出血又は重大ではないが臨床的に問題となる出血
安全性解析対象集団/治験薬投与下(治験薬投与終了後2日目まで)
*Cox比例ハザードモデル
承認時評価資料、Yamada N et al. Thromb J 2015; 13: 2-8
- 主解析結果
[有効性主要評価項目]
症候性VTEの再発の発症率はイグザレルト群1.8%、標準治療群で0%であった。
[安全性主要評価項目]
重大な出血又は重大ではないが臨床的に問題となる出血の発現率はイグザレルト群5.5%、標準治療群5.3%であった。
[副次評価項目]
- 血栓消失
承認時評価資料、Yamada N et al. Thromb J 2015; 13: 2-8より作図
- 安全性
有害事象は、イグザレルト群 4,130例中3,015例(73.0%)、標準治療群 4,116例中2,981例(72.4%)に認められた。イグザレルト群で鼻出血 307例(7.4%)、頭痛 284例(6.9%)、鼻咽頭炎 279例(6.8%)等、標準治療群では鼻咽頭炎 278例(6.8%)、鼻出血 271例(6.6%)、頭痛 242例(5.9%)等であった。重篤な有害事象は、イグザレルト群で678例に認められた。主要な事象は、肺炎 23例、胸痛 23例、貧血 22例であった。投与中止に至った有害事象は、イグザレルト群で208例に認められた。主要な事象は、貧血11例、脳梗塞8例、血尿7例であった。死亡に至った有害事象は、イグザレルト群で104例に認められた。主要な事象は、敗血症 9例、PE 7例、肺炎 4例であった。
有害事象
有害事象は、発現頻度が高かった上位3事象を記載
*:10mg1日2回投与を含む
承認時評価資料、Yamada N et al. Thromb J 2015; 13: 2-8