臨床試験:小児の静脈血栓塞栓症

EINSTEIN JUNIOR::国際共同第Ⅲ相試験

試験概要

目的

小児急性静脈血栓塞栓症(VTE)患者を対象に、体重で調整した用法及び用量によるイグザレルトの有効性及び安全性を従来療法と比較検討すること。

対象

急性VTEと診断され、ヘパリンまたはフォンダパリヌクスによる初期治療を受けた0~18歳未満の小児患者 500例

方法

患者は治験薬投与開始前少なくとも5日間、ヘパリン(未分画、低分子量)又はフォンダパリヌクスによる初期治療を受けることとした。適格基準を満たした患者を初期治療開始から9日間以内にイグザレルト又は従来療法に2:1の比で無作為割付けし、体重で調整した用法及び用量のイグザレルト又は従来療法のいずれかを投与した。すべての患者に対して、治験薬投与終了後に1ヵ月間(30日間)のフォローアップ期を設定した。

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評価項目

  • 有効性主要評価項目:
    症候性VTEの再発
  • 安全性主要評価項目:
    重大な出血又は重大ではないが臨床的に問題となる出血
  • 有効性副次評価項目:
    症候性VTEの再発又は画像検査上の無症候性の血栓像の悪化の複合
  • 安全性副次評価項目:
    重大な出血
  • その他の評価項目:
    有害事象、死亡、Net clinical benefit(症候性VTEの再発又は重大な出血)、薬物動態、薬力学、嗜好性・許容性

    判定基準

    症候性VTEの再発、画像検査上の無症候性の血栓像の悪化は、超音波検査、CT、MRI、心エコー検査、静脈造影、肺血流スキャンを含む客観的な画像診断の手法を用い、中央独立判定委員会(CIAC)によって判定された。重大な出血(ISTH基準)は、2g/dL以上のヘモグロビン量の低下を伴う出血、2単位以上の輸血(濃厚赤血球又は全血)が必要な出血、重要な臓器における出血、死因となった出血とした。重大ではないが臨床的に問題となる出血は、「重大な出血」の定義を満たさないが、医学的な介入、予定外の来院又は電話による問診や治験薬の投与中止(中断)を必要とする、痛みなどの不快な症状を伴う、あるいは日常生活に支障を来す明らかな出血事象と定義した。

    解析計画

    有効性の主要な解析は無作為割り付けされた全例(有効性解析対象集団)について行った。有効性主要評価項目及び副次評価項目について、主要投与期間終了時の集積データにおける投与群ごとの発現頻度を算出した。安全性の解析は治験薬を少なくとも1回投与された症例(安全性解析対象集団)について行った。無作為割付けから治験薬最終投与2日後までに発現したすべての出血事象を投与群ごとに集計した。また安全性の主要評価項目である「重大な出血又は重大ではないが臨床的に問題となる出血」の複合エンドポイントについて発現割合を算出した。また、これらの評価項目について、年齢層、体重、イグザレルトの剤形別に算出した。

    1)

     国内外の臨床試験成績を用いた薬物動態シミュレーションの結果、日本人に15mg1日1回および外国人に20mg1日1回のイグザレルトを投与した際の曝露量は同程度であることが確認されている。

    2)

    2歳未満のカテーテル関連VTE の患者では、主要投与期間を1ヵ月とし、その後1ヵ月ごとに投与継続を判断、最長3ヵ月投与。

    3)

    低分子ヘパリンは「VTEの治療および再発抑制」に対して、フォンダパリヌクスは「VTEの再発抑制」に対しては本邦未承認。

    第III相試験EINSTEIN-Jrにおけるイグザレルトの用法及び用量*

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    *:成人VTE患者における20㎎1日1回(日本人では15㎎1日1回)投与時と同程度の曝露量が得られるよう体重で調整
    **:イグザレルト錠5mgは本邦未承認

    承認時評価資料、Male C et al, Lancet Haematol 2020: 7: e18-e27

    本研究はバイエルの資金により行われた。また、著者にバイエルより講演料、コンサルタント料等を受領している者が含まれる。

    小児VTE患者におけるイグザレルトの有効性

    [有効性主要評価項目]

    • 症候性VTEの再発
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    有効性解析対象集団/主要投与期間(3ヵ月又は1ヵ月)

    解析方法:Cox比例ハザードモデル

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    *:症候性VTEの再発又は重大な出血

    有効性解析対象集団/主要投与期間(3ヵ月又は1ヵ月)

    解析方法:Cox比例ハザードモデル

    承認時評価資料、Male C et al, Lancet Haematol 2020: 7: e18-e27

    本研究はバイエルの資金により行われた。また、著者にバイエルより講演料、コンサルタント料等を受領している者が含まれる。

    小児VTE患者におけるイグザレルトの安全性

    [安全性評価項目]

    • 「重大な出血または重大ではないが臨床的に問題となる出血」「重大な出血」
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    安全性解析対象集団/主要投与期間(3ヵ月又は1ヵ月)

    解析方法:Cox比例ハザードモデル

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    安全性解析対象集団/主要投与期間(3ヵ月又は1ヵ月)

    解析方法:Cox比例ハザードモデル

     

    承認時評価資料、Male C et al, Lancet Haematol 2020: 7: e18-e27

    本研究はバイエルの資金により行われた。また、著者にバイエルより講演料、コンサルタント料等を受領している者が含まれる。

    有害事象

    主要投与期間における有害事象は、イグザレルト群329例中274例(83.3%)、従来療法群162例中122例(75.3%)に認められた。主な有害事象は、イグザレルト群で頭痛56例(17.0%)、鼻出血37例(11.2%)、嘔吐35例(10.6%)、従来療法群で頭痛24例(14.8%)、鼻出血18例(11.1%)、嘔吐/発熱13例(8.0%)であった。重篤な有害事象は、イグザレルト群で71例(発熱性好中球減少症7例、嘔吐6例、発熱4例等)、従来療法群で32例(頭痛3例、発熱2例、痙攣発作2例等)であった。投与中止に至った有害事象は、イグザレルト群で11例(嘔吐2例、大腸出血1例、血尿1例等)、従来療法群で3例(注射部位血種、皮下血腫、硬膜下血腫、各1例)であった。死亡に至った有害事象はイグザレルト群で1例(がん進行)、従来療法群で0例であった。

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    承認時評価資料、Male C et al, Lancet Haematol 2020: 7: e18-e27

    本研究はバイエルの資金により行われた。また、著者にバイエルより講演料、コンサルタント料等を受領している者が含まれる。