臨床試験:肺血栓塞栓症及び深部静脈血栓症

EINSTEIN PE/DVT:海外第III相試験/非劣性試験

イグザレルトは、国内および国外の第Ⅰ~Ⅲ相試験成績を基に承認されました。承認時に評価されたデータを紹介しますが、一部国内の承認内容と異なる成績が含まれています。

試験概要

EINSTEIN PE/DVT:海外第III相試験/非劣性試験

目的

急性症候性PE及びDVT患者におけるイグザレルトの安全性と有効性を標準治療(低分子量ヘパリン/ビタミンK拮抗薬)と比較検討すること。

 

対象

EINSTEIN PE:急性症候性PE患者(症候性DVTの有無を問わない)4,832例

EINSTEIN DVT:急性症候性DVT患者(症候性PEを伴わない)3,449例

 

方法

・イグザレルト群は、初期3週間はイグザレルト15mgを1日2回、その後は20mgを1日1回食後経口投与※1とした。

・標準治療群は、少なくとも初期5日間はエノキサパリンナトリウム※21mg/kgを1日2回皮下投与し、VKA※3経口投与との 併用下で、プロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)が2回連続で2.0以上となった後、VKA単独投与(目標PT-INR:2.0-3.0)とした。

・確定診断を待たずに治療開始が推奨されているVTEの疾患特性から、無作為割付前48時間以内の非経口抗凝固薬による治療は可能とした。

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評価項目

有効性主要評価項目:症候性VTEの再発

安全性主要評価項目:重大な出血又は重大ではないが臨床的に問題となる出血

副次評価項目:症候性VTEの再発[症候性DVT又は症候性PE(非致死的)]又は全死亡の複合、有効性主要評価項目の各構成要素又は重大な出血の複合、有効性主要評価項目の各構成要素、重大な出血、心血管死、心筋梗塞、虚血性脳卒中又は非中枢神経系塞栓症の複合、全死亡、心血管事象及び臨床検査値

 

判定基準

DVTは、超音波検査(CUS)、静脈造影を用いて判定した。客観的な診断が行われていない場合でも、VTEが疑われ、その治療のために治療用量での抗凝固療法を48時間超えて行った場合は、VTEと判定した。重大な出血および重大ではないが臨床的に問題となる出血は、ISTH基準を用いた。

 

解析計画

有効性主要評価項目の非劣性(ITT解析対象集団/予定投与期間、非劣性マージンは1.75)が検証された場合、有効性主要評価項目の優越性(ITT解析対象集団/予定投与期間)を検証した。また、安全性主要評価項目の優越性(安全性解析対象集団/治験薬投与下)、重大な出血の優越性(安全性解析対象集団/治験薬投与下)について解析した。事前に規定したサブグループ解析として、年齢、体重、腎機能、がんなどのリスク因子別、無作為化前の非経口抗凝固薬の有無別に解析した。

※1 

 国内外の臨床試験成績を用いた薬物動態シミュレーションの結果、日本人に15mg1日1回および外国人に20mg1日1回のイグザレルトを投与した際の曝露量は同程度であることが確認されている。なお、国内承認用法及び用量は発症後初期3週間はイグザレルト15mg1日2回、その後は15mg1日1回食後経口投与である。

※2 

エノキサパリン:VTEの治療および再発抑制としては本邦未承認[国内承認効能又は効果は、「下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制」および「静脈血栓塞栓症の発症リスクの高い、腹部手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制」]

 

※3

ワルファリンまたはacenocoumarol(本邦未承認)

承認時評価資料、Prins MH et al. Thromb J 2013; 11: 21

COI:本研究はバイエルの資金により行われた。また、著者にバイエルより講演料、コンサルタント料等を受領している者が含まれる。

PE/DVT患者におけるイグザレルトの有効性・安全性

[有効性主要評価項目]

 

  • 症候性VTEの再発
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ITT集団/予定投与期間:3、6又は12ヵ月

解析方法:Cox比例ハザードモデル(非劣性マージン:1.75)

[安全性主要評価項目]

 

  • 重大な出血
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安全性解析対象集団/治験薬投与下(治験薬投与終了後2日目まで)

解析方法:Cox比例ハザードモデル

  • 主解析結果

[安全性主要評価項目]

重大な出血又は重大ではないが臨床的に問題となる出血の発現率はイグザレルト群9.4%、標準治療群10.0%であった(ハザード比0.93[95%信頼区間:0.81-1.06]、p=0.27*)。

*Cox比例ハザードモデル

  • 安全性

有害事象は、イグザレルト群 4,130例中3,015例(73.0%)、標準治療群 4,116例中2,981例(72.4%)に認められた。イグザレルト群で鼻出血 307例(7.4%)、頭痛 284例(6.9%)、鼻咽頭炎 279例(6.8%)等、標準治療群では鼻咽頭炎 278例(6.8%)、鼻出血 271例(6.6%)、頭痛 242例(5.9%)等であった。重篤な有害事象は、イグザレルト群で678例に認められた。主要な事象は、肺炎 23例、胸痛 23例、貧血 22例であった。投与中止に至った有害事象は、イグザレルト群で208例に認められた。主要な事象は、貧血11例、脳梗塞8例、血尿7例であった。死亡に至った有害事象は、イグザレルト群で104例に認められた。主要な事象は、敗血症 9例、PE 7例、肺炎 4例であった。

腎機能別の安全性(サブグループ解析)

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安全性解析対象集団/治験薬投与下

CLcr:クレアチニンクリアランス

解析方法:Cox比例ハザードモデル

 

承認時評価資料、Prins MH et al. Thromb J 2013; 11: 21より作図

Fragile症例における安全性(サブグループ解析)

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安全性解析対象集団/治験薬投与下

CLcr:クレアチニンクリアランス

解析方法:Cox比例ハザードモデル

 

承認時評価資料、Prins MH et al. Thromb J 2013; 11: 21より作図

Fragileの定義:年齢75歳超、CLcr50mL/min未満、体重50kg未満のいずれかに該当する症例

 2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)(抜粋)

 

〈静脈血栓塞栓症の治療及び再発抑制〉2.11 重度の腎障害(成人ではクレアチニンクリアランス30mL/min未満、 小児ではeGFR 30mL/min/1.73m2未満)のある患者

 

9. 特定の背景を有する患者に関する注意(抜粋)

9.1.2

 低体重の患者

出血の危険性が増大することがある。

9.2

腎機能障害患者

 

9.2.1

腎不全の患者(クレアチニンクリアランス15mL/min未満)投与しないこと。国内外第Ⅲ相試験において除外されている。

9.2.2

重度の腎障害患者(クレアチニンクリアランス15~29mL/min) 

〈深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症の治療及び再発抑制〉

投与しないこと。国内外第Ⅲ相試験において除外されている。

9.2.3

腎障害のある患者(クレアチニンクリアランス30~49mL/min)

本剤投与の適否を慎重に検討すること。本剤の血中濃度が上昇することが示唆されており、出血の危険性が増大することがある。

9.8

高齢者

一般に腎機能などの生理機能が低下している。なお、非弁膜症性心房細動患者を対象とした国内第Ⅲ相試験において75歳以上の患者では75歳未満の患者と比較し、重大な出血及び重大ではないが臨床的に問題となる出血の発現率が高かった。

有害事象

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承認時評価資料、Prins MH et al. Thromb J 2013; 11: 21